フツーリーマンの雑記帳

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ローマ亡き後の地中海世界

おはようございます、TASUKEです。

 

塩野七生先生の「ローマ亡き後の地中海世界(文庫版全4巻)」を読了しました。

塩野さんの著作を読んでいると、男性以上に骨太な筆致に魅了されてしまいます。

言葉足らずは覚悟の上で要約と感想を。

 

前半は、7世紀に勃興したイスラム勢力の伸長が描かれます。かつて、ローマ帝国の内海だった地中海の東(パレスチナ、シリア、エジプト)と南(リビアチュニジアアルジェリア)は瞬く間にイスラムの色に染まり、少し時間をおいて、イベリア半島までもがイスラム化します。

 

そして、北アフリカでは海賊業が産業化(海賊が産業というのもヘンですが)し、そこから出航する海賊船が最初はシチリア島、ついで南イタリアに襲来するようになり、人々は苦しめられます。

 

当時のイタリアは小勢力が相争っており、組織的に海賊に対処できる能力を失っていました。海賊に襲われる海岸沿いの町や村は、見張り用の塔を作り、海賊を見つけ次第に逃げるという方法しか策がなかったようです。

 

不幸にも逃げ遅れた者は抵抗すれば殺され、投降したものは奴隷として北アフリカに連れ去られました。

 

後半は、イタリアの海洋都市国家アマルフィ、ピサ、ジェノヴァヴェネツィア)の勃興やローマ法王が提唱して始まった十字軍などキリスト教世界の反撃、そして強大なオスマントルコとの戦いが描かれます。

 

地中海の海賊はその後も消滅することはなく、19世紀の初頭までその活動が続いたようで、驚きです。正確な数字は残っていませんが、1,000年以上にわたる海賊の活動で数百万人にのぼる人々がヨーロッパから北アフリカなどに拉致されたとも言われます。

 

キリスト教世界とイスラム教世界の対立が描かれる一方で、中世のシチリア島では約400年間にわたってキリスト教徒とイスラム教徒が共存するなど、幸福な時代もあったようです。そのおかげで、シチリアではルネサンスに先駆けてイスラム世界から逆輸入されたギリシア哲学などの学問が盛んになりました。そのような環境が、中世に近代国家を目指したフリードリヒ(フェデリコ)2世の登場につながるのかもしれません。

 

シチリアやフリードリヒ2世については、塩野さんが別に執筆された「フリードリヒ2世の生涯」を読んでいるところですので、改めて記載したいと思います。

 

<感想まとめ>

ずいぶん前にその前史となる「ローマ人の物語(文庫版全43巻)」を通読しましたが、その根底に流れるテーマは同じだと思いました。

 

やや乱暴ですが、まとめるとこう言えるかと思います。

 

「平和」はタダで手に入るものではなく、維持するためにはそれ相応のコスト(軍事力)が必要になる。だが、「平和」が保障されなければ、経済も文化も発展しない。

 

コスト(軍事力)なき平和は絵空事に過ぎないのだ、と。